今回のテーマは、「確定申告が終わった後のアクション」についてです。
個人事業主の皆様、フリーランスの皆様、そしてスモールビジネスを営む経営者の皆様、毎年の確定申告、本当にお疲れ様です。そろそろ、今年度の確定申告の書類作成は無事に完成しましたでしょうか?あるいは、税務署への提出を終えて、ホッと肩の荷を下ろしているところかもしれませんね。
過去を振り返れば、感染症の拡大など社会的な大きな変化があり、申告の提出期限が特例で延びた年もありました。「今年は早めに終わらせよう!」と毎年決意するものの、日々の業務の忙しさに追われ、期限が延びれば延びた分だけ、結局いつもギリギリになってしまう……なんて方も多いのではないでしょうか。(人間の心理として、期限に余裕ができるとついつい後回しにしてしまうのは、ある意味で仕方がないことですよね)
特に個人事業主さんは、本業の営業や制作、顧客対応をこなしながら、並行して自分で日々の数字の管理をし、領収書の山と格闘して、ご自身で書類を作成して確定申告を提出している、という方が非常に多いかと思います。一部の方は、ある程度の規模になって税理士さんなど専門家にお願いしているかもしれませんが、いずれにせよ「確定申告を無事に終わらせる」こと自体が、春先の一大イベントであり、多大なエネルギーを消費する作業であることは間違いありません。
しかし、ここで皆様に強くお伝えしたい、非常に重要なことがあります。 それは、「確定申告は、税務署に書類を提出して終わりではない」ということです。
「どんぶり勘定」からの脱却:提出することを目的にしていませんか?
さて、苦労して作成した確定申告の書類(青色申告決算書や収支内訳書)ですが、提出する前に、あるいは提出した後に、その中身を「しっかり確認して検証」していますか?
多くの方が、最終的な「今年の売上がトータルでどんだけあったか」「経費が全体でどんだけかかったか」、そして「その結果、利益がいくら残って、支払うべき税金がいくらになるのか」という、大枠の数字だけを見て満足してしまっています。 「今年は去年より少し売上が上がったな」「思ったより経費がかさんで利益が減っちゃったな、税金はこれくらいか」といった、いわゆる「どんぶり勘定」のざっくりとした計算は、誰しもが見ているかと思います。
もちろん、全体像を把握することは経営の第一歩として大切です。しかし、中身の細かい部分、つまり「各項目の詳細」まで、虫眼鏡で覗き込むようにしっかりと見ているでしょうか?
実は、この「細かい部分を見る」プロセスこそが、今年の売上を劇的に伸ばし、ビジネスを安定させるために、とっても大切な作業なのです。確定申告書は、税金を計算するためだけの「お役所向け書類」ではありません。過去1年間のあなたのビジネスのすべての行動と結果が記録された、「経営の成績表」であり「最強のデータ集」なのです。
この宝の山を放置しておく手はありません。各勘定科目(経費のカテゴリー)の伸び幅や減少幅などを細かく確認し、「昨年の動き」と「一昨年の動き」の変化(トレンド)を確認することが、ビジネスを成長させるための最大のヒントになります。
実践編:各勘定科目に隠されたビジネスのヒントを読み解く
では、具体的にどのように数字を見ていけばいいのか?いくつかの代表的な勘定科目を例に挙げて、深掘りしてみましょう。

例えば、「旅費交通費」の項目を見てください。前年比で上がっていますか?下がっていますか? もし上がっているとすれば、それは出張や対面での打ち合わせ、現場への移動が増えていることを意味します。その出張は、近場での移動がメインでしたか?それとも新幹線や飛行機を使い、宿泊を伴う遠征でしたか?
ここで検証すべきは、「その交通費の変化が、実際の売り上げの増加に直結するものであったか?」という点です。 全国を飛び回って交通費が倍増した結果、新規の大型案件が次々と決まり、売上が大きく伸びたのであれば、その旅費交通費は素晴らしい「投資」です。しかし、もし交通費だけが膨れ上がり、売上が横ばい、あるいは下がっているのであれば、その移動の費用対効果は低かったと言わざるを得ません。
近年はオンラインミーティング(Zoomなど)のツールも当たり前になりました。「わざわざ直接出向いて信頼関係を構築すべき案件」と、「オンラインで効率的に済ませるべき案件」の切り分けは適切だったでしょうか?数字を見ることで、あなた自身の「時間の使い方」や「営業スタイルの効率性」を客観的に見直すことができるのです。

次に「広告宣伝費」です。これはビジネスを拡大する上で非常にアグレッシブな経費ですが、前年比で何パーセント増減していますか?
さらに一歩踏み込んで、その内訳を見てみましょう。 インターネットの広告(SNS広告、Googleなどの検索連動型広告、ポータルサイトへの掲載料など)と、印刷物などのアナログの広告(チラシ、ダイレクトメール、看板、フリーペーパーなど)では、どのような比率でお金を使っているでしょうか?
そして最も重要な問いかけです。「全体の売り上げの変化に、この広告費はしっかり連動していますか?」
広告費を増やした分だけ売上が伸びていれば、その広告戦略は成功しています。しかし、「広告費を減らしたにもかかわらず、売上が伸びている」というケースもあります。これはどういうことでしょうか? もしかすると、あなたのビジネスの認知度が上がり、SNSでの口コミやお客様からの紹介(リファラル)だけで自然と集客できる「ブランド力」が育ってきている証拠かもしれません。逆に、広告費を毎月垂れ流しているのに問い合わせが一切増えていないのであれば、ターゲットの設定や広告を出す媒体を今すぐ見直す必要があります。広告費は「いくら使ったか」ではなく「1人の顧客を獲得するのにいくらかかったか」という視点で検証することが大切です。

スモールビジネスにおいて、最もコントロールが難しく、かつブラックボックスになりやすいのが「交際費(接待交際費)」です。 取引先との会食、情報交換のためのゴルフ、異業種交流会への参加費など、いろんな交際費がありますよね。これも前年対比からの変化を見てみましょう。
交際費が増えている場合、それは本当に「生きたお金」として使われているでしょうか? その場限りの楽しい飲み会や、ただの愚痴の言い合いになってしまっている会合に消えていないでしょうか。交際費として使った金額と、そこから得られた新しい人脈、有益な情報、あるいは直接的な仕事の紹介などを天秤にかけてみてください。ビジネスを広げるための「投資」としての交際費であれば問題ありませんが、単なる「浪費」になっている部分があるなら、今年はスパッと削る勇気も必要です。

「消耗品費」や「通信費」、さらに「支払手数料」といった項目も侮れません。 特に現代のビジネスにおいて非常に多いのが、「見えないサブスクリプション(月額課金)の罠」です。
過去に「便利そうだから」と契約したものの、今は全く使っていないクラウド会計のオプション機能、デザインツール、オンラインサロンの会費、あるいは無駄に高いままのスマートフォンの通信プランなどが、毎月自動的に引き落とされていませんか? 一つ一つは月額数千円であっても、チリも積もれば山となります。年間を通せば数万円、数十万円というあなたの「利益」を静かに、確実に削り取っているのです。これらを見直して解約するだけで、売上を1円も上げなくても、手元に残る利益を確実に増やすことができます。
利益体質を作る鍵:「固定費」と「変動費」を分解する
いろんな勘定項目を見てきましたが、それぞれの項目が寄り集まって、あなたの会社の「売り上げ」と「経費」を作っています。そして、売上から経費を差し引いた差額が、「利益」として最終的に手元に残ります。
この数字の構造をより深く理解するために、すべての経費を大きく2つのグループに分けて考えてみることを強くおすすめします。それが**「固定費」と「変動費」**です。
- 固定費(こていひ): 売上がゼロでも、毎月必ずかかってくる決まった経費のこと。(例:事務所の家賃、水道光熱費の基本料金、従業員の固定給、ネット回線代、リース代など)
- 変動費(へんどうひ): 売上の増減に比例して、連動してかかってくる経費のこと。(例:商品を仕入れるための原価、販売手数料、商品の梱包資材、発送のための送料、外部パートナーへの外注費など)
今年の決算書を見て、毎月の「固定費」は全体として上がっていますか?下がっていますか? また、「変動費」になる部分は、売上に対して一体何パーセントを占めていますでしょうか?(これを変動費率と呼びます)。
ビジネスを安定させるための鉄則は、「固定費をできるだけ低く抑え、変動費のコントロールを徹底する」ことです。 固定費が高いビジネスモデルは、毎月のプレッシャーが大きくなります。例えば家賃が高いオフィスを借りてしまうと、毎月その家賃を払うためだけに相当な売上を上げなければなりません。逆に、固定費が低ければ、少し売上が落ち込んだ月があっても、すぐに赤字に転落するリスクを防ぐことができます。
「自分のビジネスは、月に最低いくら売り上げれば赤字にならないのか?(損益分岐点)」。このラインを明確に把握しておくことは、経営者としての心の平穏を保ち、大胆な戦略を打つための絶対的な土台となります。
過去のデータから、未来の「売上予測」を立てる
このように、それぞれの勘定科目の項目について、前年対比・前々年対比からの「変化の波」を見つつ、それを踏まえて「今年はどう変化していくか?」を予測していくことが極めて重要です。
「去年はネット広告にこれだけ投資して、これだけ売上が作れた。今年は広告費をさらに1.5倍に増やして、新しいターゲット層を開拓しよう」 「去年は無駄な交際費とサブスク代が多かったから、今年はここを削って、その分を新しい機材の購入(設備投資)に回そう」
過去の事実(データ)に基づいた分析ができれば、単なる「勘」や「希望的観測」ではない、非常に精度の高い今年の「売上予測」や「事業計画」が立てやすくなるはずです。どこにアクセルを踏み、どこでブレーキをかけるべきか、その答えはすべて、あなたが苦労して作り上げた確定申告の数字の中に隠されています。

今年こそは、確定申告が終わって記憶が新しいうちに、決算書の数字の隅々までしっかりと見直しをしましょう。
普段の忙しい業務の中では、どうしても「通帳の残高」や「当月の売上と経費の合計金額」といった、目の前のお金の出入りしか見ていないかもしれません。現場の仕事に追われていれば、それはある意味で仕方のないことです。
しかし、だからこそ「一年に一度くらいは」、自分のビジネスの健康診断の結果を見るような気持ちで、各項目をじっくりと見直していくと良いですよ。
最初は、数字をどう分析して、どう経営に活かせばいいか分からないかもしれません。「分析してみたけれど、今年の戦略にどう活用すればいいか思いつかない」ということもあるでしょう。 しかし、その数字から得られた気づきを、すぐに100%活用できるか、できないかは、今は別としても構いません。
大切なのは、「自分のビジネスの数字と真正面から向き合う時間を作る」こと自体です。 ただ税務署に出して終わりにする人と、毎年自分の数字を振り返り、一つ一つの経費の意味を問い直す人。 この両者では、「数字を見るか、見ないか」というたったそれだけの違いで、1年後、3年後、5年後のビジネスの生存率と成長曲線に、圧倒的な「大違い」が生まれます。
確定申告という大きな山を乗り越えた今こそが、最大のチャンスです。 ぜひ温かいコーヒーでも淹れて、リラックスした状態で、あなた自身の1年間の頑張りの結晶である「決算書」をじっくりと眺めてみてください。そこにはきっと、今年あなたのビジネスが劇的に飛躍するための、素晴らしいヒントが隠されているはずですよ。

















こんにちは、愛知県豊橋市を拠点として全国の中小企業の皆さんの、集客と販売促進のサポートを、デザイナーとコンサルタント両方の視点でサポートしている、販促工房の笹野です。