開業したての個人事業主が陥りやすい失敗談10選第９回　

こんにちは、愛知県豊橋市を拠点として全国の中小企業の皆さんの、集客と販売促進のサポートを、デザイナーとコンサルタント両方の視点でサポートしている、販促工房の笹野です。

# 個人事業主が陥りやすい失敗⑨：同業者や専門家とのつながりがなく孤立する

## はじめに
「競合とは距離を置くべき」
「自分の力だけで成功したい」
「困ったことがあればネットで調べれば解決できる」
このような考えが頭をよぎったことはありませんか？多くの個人事業主が陥る第9の失敗パターンが、この「同業者や専門家とのつながりがなく孤立する」という問題です。相談相手がいないと、行き詰まったときに方向転換ができず迷走してしまい、時間とチャンスを無駄にしてしまうことになります。
前回の「収支の管理が甘く、どんぶり勘定になる」に続き、今回は孤独な奮闘から抜け出し、適切なネットワークを構築することの重要性について探っていきます。

## よくある失敗例：孤立して迷走するウェブライター

しかし、半年経っても思うように案件が取れず、単価も上がらない状況に陥ります。行き詰まりを感じても相談相手がおらず、インターネット上の情報だけを頼りに試行錯誤。結果的に時間と機会を無駄にし、精神的にも孤独感を抱える日々が続いていました。
加藤さんは、クライアントからの厳しい要求や原稿の修正依頼に一人で対応する中で、徐々に自信を失っていきました。「これが業界の常識なのか、それとも私の力不足なのか」という判断もつかず、行き詰まりを感じる日々が続いていたのです。

## なぜ「孤立」が危険なのか？

「一人で黙々と作業するのが個人事業主の姿」というイメージは必ずしも正しくありません。孤立した状態で事業を続けることには、多くの危険性が潜んでいます：
### 1. 情報の偏り
自分の経験と検索だけでは得られる情報に限界があります：
– **検索で出てくる情報は氷山の一角**：実践的なノウハウは非公開の場で共有されることが多い
– **情報の新鮮さや信頼性の判断が難しい**：古い情報や特殊なケースを一般化した情報に惑わされる
– **成功事例だけが目立ちやすい**：実際の失敗例や苦労話は公開されにくい
たとえば、「この業界の相場単価」といった情報は、同業者との会話から得られることが多いものです。
### 2. 盲点の存在
自分では気づけない問題点や改善点が必ず存在します：
– **自己評価の難しさ**：自分の強みや弱みを客観的に把握することは困難
– **思い込みによる判断ミス**：「これが正しいはず」という思い込みが修正されない
– **専門外の知識不足**：会計や法律など専門的な分野での判断ミス
他者からのフィードバックがないと、同じ間違いを繰り返してしまうことになります。
### 3. 精神的な負担
失敗や挫折を一人で抱え込むことによる影響は大きいです：
– **モチベーションの維持が困難**：成功体験を共有できる相手がいない
– **失敗からの立ち直りが遅れる**：同じ経験をした人からの助言が得られない
– **不安や焦りの増幅**：「自分だけ」という思い込みから不安が大きくなる
個人事業主の休業理由として「メンタルヘルスの問題」が挙げられることも少なくありません。
### 4. 業界の変化への対応遅れ
最新のトレンドや市場の変化を見逃しやすくなります：
– **新しい技術やツールの情報不足**：効率化のチャンスを逃す
– **クライアントニーズの変化への鈍感さ**：市場の変化に気づかず、対応が遅れる
– **競合状況の把握不足**：差別化ポイントを見出せない
業界の動向を常に把握していないと、いつの間にか時代遅れになってしまうリスクがあります。
### 5. 成長スピードの低下
他者からの刺激や学びの機会が少なくなることで：
– **スキルの伸び悩み**：他者の仕事や考え方から学ぶ機会の損失
– **新しい発想の不足**：異なる視点からのアイデアが生まれにくい
– **成功事例の横展開の遅れ**：効果的な手法を知るタイミングが遅れる

## 対策：意識的にネットワークを構築する

では、このような孤立状態を避けるために、どのようなアプローチが効果的でしょうか？
### 1. 同業者コミュニティへの参加
同じ仕事をしている人たちとのつながりは、何にも代えがたい価値があります：
– **業界団体やオンラインコミュニティ**：FacebookグループやSlackワークスペースなど
– **SNS上の業界ハッシュタグやグループ**：TwitterやInstagramでの交流
– **勉強会や交流会**：オンライン・オフライン問わず定期的に参加
「競合だから情報を与えたくない」という考えは、実は機会損失になることが多いです。実際には案件の紹介や協業など、同業者同士の協力から生まれるメリットの方が大きいことがほとんどです。
### 2. 専門家とのつながり
自分の専門外の分野はプロに頼ることで、本業に集中できます：
– **税理士・会計士**：財務面のアドバイスや節税対策
– **中小企業診断士**：経営全般のアドバイスや事業計画策定
– **先輩起業家・メンター**：経験に基づく実践的なアドバイス
初期投資と考えれば、専門家への報酬は十分元が取れることが多いです。
### 3. 異業種交流
異なる業種の人との交流も、新たな視点や機会をもたらします：
– **地域の商工会議所や商工会**：地域に根差したネットワーク
– **創業支援センターの交流会**：創業間もない事業者同士の交流
– **コワーキングスペースのコミュニティ**：日常的に顔を合わせる関係性
異業種との交流は、思わぬ協業や紹介につながることも少なくありません。

## 成功事例：積極的なネットワーク構築で事業拡大を実現したデザイナー

そこで知り合った先輩デザイナーから「ポートフォリオの見せ方」についてアドバイスを受け、大幅にリニューアル。その結果、問い合わせ数が3倍に増加しました。
さらに、交流会で知り合った税理士との出会いから「デザイナー向けの確定申告セミナー」の講師を依頼され、そこで新たなクライアントとの接点も生まれました。また、同業者ネットワークを通じて、自分の得意分野ではない案件を相互に紹介し合う関係も構築できました。
孤独になりがちなフリーランスですが、江藤さんは「一人で働いていても、一人で仕事をしているわけではない」という感覚を大切にし、困ったときにはすぐに相談できる環境を整えています。
「最初は『自分の弱みをさらけ出すのは怖い』と思っていましたが、実際に交流してみると、みんな同じような悩みを抱えていることがわかりました。情報交換することで解決策が見つかることも多く、何より精神的な支えになっています」と江藤さんは語ります。

## 実践アドバイス：人見知りでも始められるネットワーキング

「でも人見知りで…」「つながり方がわからない」という方も多いでしょう。以下のシンプルなステップから始めてみましょう：
### 1. オンラインから始める
FacebookやXのグループ、Slackコミュニティなど気軽に参加できる場から。物理的な移動も必要なく、自分のペースで参加できます。
### 2. 最初は聞き役でOK
積極的に発言せず、情報収集から始めましょう。他の人の会話を観察するだけでも多くの学びがあります。
### 3. 具体的な質問をする
「いいね」だけでなく、相手の投稿に質問してみましょう。質問は最も受け入れられやすいコミュニケーション方法です。
### 4. 小さな貢献から
自分が知っている情報を少しずつシェアしましょう。完璧でなくても、誰かの役に立つ情報はあるはずです。
### 5. 1対1の関係構築
大きな交流会より、気の合う1人と深く話す機会を作りましょう。質より量を重視した関係づくりが大切です。

## まとめ：孤独は個人事業主の最大の敵

「一人だから自由」という個人事業主の魅力の一方で、「一人だから孤独」というリスクも存在します。しかし、この孤独は必然ではなく、意識的なネットワーク構築によって解消できるものです。
適切なつながりを持つことは、情報収集や相談だけでなく、精神的な支えや新たなビジネスチャンスにもつながります。「一人で全部やる」という固定観念から離れ、周囲の力を借りることで、事業の成長スピードも心の健康も大きく変わるでしょう。
最初から広いネットワークを持つ必要はありません。まずは一人の信頼できる同業者や専門家とのつながりから始め、徐々に輪を広げていくことが大切です。孤立を避け、適切なネットワークを構築することが、個人事業主として長く活躍するための重要な鍵となります。
次回（最終回）は「最初から理想を求めすぎて、行動が止まる」というテーマでお届けします。「完璧に準備してからじゃないと始められない」と思い、チャンスを逃すという失敗について解説しますので、どうぞお楽しみに。
—
*この記事は「開業したての個人事業主が陥りやすい失敗談10選」シリーズの第9回目です。個人事業主として成功するための知識やノウハウを、全10回にわたってお届けしています。*